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2025/12/09

IoTエッジデバイスって難しい!用途に合わせた構成と開発コストを解説

IoTエッジデバイスの開発において、「どのような構成にすべきか」という判断は、プロジェクトの成否を左右する重要な要素です。株式会社イーエル・オカモトでは、これまで数多くのIoTエッジデバイスの試作・設計を手がけてきましたが、その経験から、設計を考える際に最も重要となる4つの項目が明確になってきました。

本記事では、IoTエッジデバイス設計における重要な判断基準と、それぞれが開発コストや工数にどのように影響するかを解説します。

また、弊社ではIoTエッジデバイスの製造に関しても実績があり、部品調達・調達代行まで含めて製造サービスを提供しております。

IoTエッジデバイス設計の4つの重要判断項目

IoTエッジデバイスの設計を開始する前に、以下の4つの項目を明確にすることが不可欠です。これらの判断次第で、開発工数、製造コスト、運用コストが大きく変動します。

電源があるのか?ないのか?

Wi-Fiがある(使える)か?ない(使えない)か?

使用する環境は?防水・防塵が必要か?不要か?

通信は上りだけ?下りも必要か?

1. 電源があるのか?ないのか?

電源がある場合:比較的シンプルな設計

設置場所にAC100VやDC12Vなどの電源が確保できる場合、IoTエッジデバイスの電源設計は比較的シンプルです。ACアダプタやDC-DCコンバータで電力を供給できるため、デバイスの消費電力をそれほど気にする必要がなく、高性能なプロセッサや通信モジュールを選択できます。また、常時稼働が可能なため、リアルタイムでのデータ収集や頻繁な通信が実現できます。

電源がない場合:大幅に工数が増加

一方、設置場所に電源がない場合、電池駆動を前提とした設計が必要となり、考慮すべき項目が一気に増えます。まず電池の種類として、一次電池(使い捨て)か二次電池(充電式)かを選択する必要があります。一次電池は初期コストが低くメンテナンスフリーですが、定期的な交換が必要です。二次電池は繰り返し使用可能ですが、充電機構が必要となり初期コストが高くなります。

最も重要なのは、電池でどれくらいの期間エッジデバイスを稼働させる必要があるかという要件です。数日から数週間程度であれば比較的容易ですが、数ヶ月から数年以上の長期稼働が必要な場合、省電力設計が極めて重要になります。

長期間の電池駆動を実現するには、超低消費電力マイコンや省電力センサーの採用、必要な時だけ起動するスリープモードの活用、通信頻度を減らす(例:1時間に1回、1日に1回など)、センシング間隔の調整といった省電力設計が必要です。これらの設計により電池寿命を数倍から数十倍延ばすことが可能ですが、その分、開発工数は電源がある場合に比べて増加することが一般的です。

2. Wi-Fiがある(使える)か?ない(使えない)か?

通信方式の選択は、IoTエッジデバイスの設計において最も重要な判断の一つです。

Wi-Fiが使える場合:低コスト・高速通信

設置環境にWi-Fi環境が整っている場合、Wi-Fi経由での通信が最も効率的です。既存のインターネット回線を利用するため追加の通信費用が不要で、画像データや大量のセンサーデータも送信可能です。リアルタイムに近いデータ収集ができ、応答性の高いシステムを構築できます。オフィスや工場内の設備監視、家庭内のスマート家電、Wi-Fi環境が整った商業施設での利用に適しています。

Wi-Fiが使えない場合:モバイル通信やLPWAの選択が必要

Wi-Fiが使えない環境、または顧客環境で顧客のWi-Fiを使用できない場合には、モバイル通信回線(4G/LTE、5Gなど)やLPWA(Low Power Wide Area)通信を選択する必要があります。

モバイル通信回線は広いエリアカバレッジと比較的高速な通信、双方向通信が可能という利点がありますが、月額料金やデータ通信料が発生し、消費電力が大きいため電池駆動には不利です。また、通信モジュールのコストが高く、地下や山間部などでは電波状況に影響を受けて通信が不安定になることがあります。

LPWAはSigfox、LoRaWAN、NB-IoTなどの規格があり、超低消費電力で長距離通信が可能、通信コストが比較的安価という特徴があります。電池駆動に最適で数kmから数十kmの長距離通信ができますが、通信速度が遅く小容量データ向けで、通信頻度に制限がある場合もあります。また、技術的な難易度がWi-Fiに比べて高く、設定や調整が複雑です。

Wi-Fiに比べて、モバイル通信やLPWAを使用する場合、開発工数が増加します。また、電波状況に通信が大きく影響を受けるため、現地での通信テストや調整が必要となり、問題も発生しやすい傾向があります。

3. 使用する環境は?防水・防塵が必要か?不要か?

IoTエッジデバイスを設置する環境によって、必要な保護等級が大きく変わります。

環境を考慮する必要がない場合

屋内の空調が効いたオフィスや清潔な環境での使用であれば、特別な防水・防塵対策は不要です。オフィス、会議室、データセンター、清潔な製造エリアなどでは、一般的なプラスチックケースや簡易的な筐体で対応可能で、コストを抑えられます。

防水・防塵が必要な場合:コストと工数が大幅に増加

屋外や工場内の環境が厳しい場所での使用では、防水・防塵対策が必須となります。屋外(雨、雪、直射日光)、工場内の粉塵が多いエリア、高温・低温環境、湿度が高い環境、振動や衝撃が多い環境などでは、IP65(防塵完全、防噴流水)からIP68(防塵、継続的な水没に対する保護)といった保護等級に対応したケース設計が必要です。

防水・防塵対応の専用ケース、パッキンやシール材の使用、防水コネクタやグランドによるケーブルの防水処理が必要になります。また、高温対策として放熱設計や耐熱部品の選定、低温対策として低温動作保証部品の選定やヒーター内蔵などの温度対策も考慮しなければなりません。さらに、産業用グレードや車載グレードの部品、広い動作温度範囲の部品、耐振動・耐衝撃部品の採用が必要となります。

防水・防塵対応が必要な場合、環境を考慮しない場合に比べて、開発工数が大幅に増加します。環境が厳しくなればなるほど、考慮するポイントが多くなり、コストアップに繋がります。

4. 通信は上りだけ?下りも必要か?

IoTエッジデバイスの通信方向によって、システムの複雑さが大きく変わります。

上り通信のみの場合:比較的シンプル

上り通信(アップロード)とは、エッジデバイスからクラウドへのデータ送信のみを行う通信です。センサーデータの収集(温度、湿度、振動など)、位置情報の送信、稼働状況のモニタリング、アラート通知といった用途に使用されます。システム構成がシンプルで、エッジデバイス側の処理が軽く、消費電力が少なく、開発工数も少なくて済みます。

下り通信も必要な場合:開発コストが大幅に増加

下り通信(ダウンロード)とは、クラウド側からエッジデバイスに対して、制御命令や設定変更を送信する通信です。遠隔制御(機器のON/OFF、動作モード変更)、ファームウェアのアップデート、設定値の変更(閾値、動作パラメータなど)、アクチュエーターの制御といった用途に使用されます。

下り通信が必要な場合、双方向通信の実装として下り通信の受信処理、コマンドの解析・実行、応答の送信が必要になります。また、制御を行う場合にはリレー(電源のON/OFF制御)、モーター(物理的な動作制御)、ソレノイド(バルブの開閉など)、LED・ブザー(状態表示、警報)といったアクチュエーターとその駆動回路の設計が必要となり、回路が複雑化します。

さらに、不正なコマンドの実行を防ぐためのセキュリティ対策として、コマンドの認証、通信の暗号化、権限管理が必須です。通信失敗時の再送処理、コマンド実行失敗時の対応、クラウドとデバイスの状態を一致させるための状態同期といったエラー処理も必要になります。

下り通信が必要な場合、上り通信のみの場合に比べて、開発工数が数倍以上に増加します。考慮すべき項目がアクチュエーター制御、セキュリティ、エラー処理など多岐にわたり、開発コストが一気に上がります。

まとめ:最適な構成を選択するために

IoTエッジデバイスの設計において、4つの項目を最初に明確にすることで、開発工数とコストを正確に見積もることができます。最もシンプルな構成(低コスト)は、電源あり、Wi-Fi使用、屋内環境、上り通信のみです。一方、最も複雑な構成(高コスト)は、電池駆動、モバイル通信またはLPWA、屋外・防水防塵、双方向通信(制御あり)となります。

イーエル・オカモトのIoTエッジデバイス開発サポート

株式会社イーエル・オカモトでは、お客様の用途や予算に応じて、最適なIoTエッジデバイスの構成をご提案します。要件定義段階からのコンサルティング、各種通信方式に対応した設計(Wi-Fi、LTE、LoRaWAN、Sigfoxなど)、省電力設計・電池駆動設計、防水・防塵対応の筐体設計、試作から量産まで一貫対応が可能です。

IoTエッジデバイスの開発でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。最適な構成と開発計画をご提案いたします。

株式会社イーエル・オカモト

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